ボリビア内政・外交(2020年10月)

令和2年10月21日

1 概況

(1)18日,総選挙が実施され,24日,アルセ候補の当選が確定した。国会は上院・下院ともMAS党が過半数を獲得した。

(2)28日,上院及び下院は院内規則の条文を改正し,一部法案を3分の2以上の票ではなく過半数の票で可決できるようにした。
 

2 内政

(1)世論調査

ア 9日,Ipsos社は9月21日~10月4日にボリビア9県の都市部及び地方の計2,000名を対象に実施した大統領選挙立候補者に対する投票選好にかかる世論調査結果(実施主体はred UNO及びチャンネルRTP,誤差±2.2%)を公表した。
「誰に投票するか」に対する回答
アルセ元経済・財務大臣(MAS党):34.0%
メサ元大統領(政党連合「市民共同体」(CC)):27.9%
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長(政党連合「私たちは信じる」):13.8%
チ候補(FPV党):2.6%
キロガ元大統領(政党連合「自由と民主主義」):1.6%
クルス候補(ADN):0.5%
ママニ候補(PAN-BOL党):0.2%
白票/誰でもない:7.2%
無効:2.2%
無回答:10.0%
イ 9日,CELAGが9月19日~29日にボリビア9県の都市部及び地方の1,700名を対象に実施した大統領選挙にかかる世論調査の結果を発表したところ,同概要次のとおり。
「誰に投票するか」
アルセ元経済・財務大臣(MAS):36.4%
メサ元大統領(政党連合「市民共同体」):27.9%
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長(政党連合「私たちを信じる」):12.5%
無効票ほか:18.0%
チ候補(FPV党):2.3%
キロガ元大統領(政党連合「自由と民主主義」):2.2%
その他の候補:0.7%
ウ 9日,フビレオ財団が10月2日~5日にボリビア9県の都市部(11,205名)及び地方(4,332名)の15,537名を対象に実施した大統領選挙にかかる世論調査「Tu Voto Cuenta」の結果(誤差±0.79%)を発表したところ,同概要次のとおり。(URL:tuvotocuenta.org.bo/Resultados)
「誰に投票するか」
アルセ元経済・財務大臣:33.6%(9月:29.2%)
メサ元大統領:26.8%(9月:19.0%)
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長:13.9%(9月:10.4%)
無回答・未定:9.9%(9月:9.8%)
無効票:6.3%(9月:10.6%)
白票: 5.4%(9月:7.1%)
チ候補:2.3%(9月:3.2%)
キロガ元大統領:1.1%(9月:2.0%)
バヤ候補:0.4%(9月:0.6%)(当館注:10月7日,同党は立候補辞退を表明した)
ママニ候補:0.3%(9月:0.4%)
 

3 総選挙及び同選挙前後の状況

(1)7日,ロドリゲスADN党ラパス県支部長は,6日に各県支部代表と党首でスクレ市において会合を行い,ADN党の立候補辞退を決定した旨発言した。

(2)7日,国連,EU及びボリビア・カトリック司教会議は,「平和な選挙のため」と題する共同声明(別添)を発出し,暴力ではなく対話による対立の解決を求める旨呼びかけた。

(3)11日,キロガ大統領候補(政党連合「自由と民主主義」,元大統領)は,立候補辞退を表明した(当館注:これにより現時点の大統領立候補者は,5名となった。)。

(4)17日夜,ロメロ最高選挙裁判所(TSE)長官は,暫定開票システム(DIREPRE)の運用を中止する旨発表した。国連,EU及びボリビア・カトリック司教会合並びに米州機構(OAS),カーターセンター及びUNIOREはそれぞれ共同声明を発出し,公式集計結果を尊重するよう国民に呼びかけた。

(5)18日,総選挙が実施された。同日20:00に予定されていた出口調査の結果公表は延期された。21時頃,ロメロ最高選挙裁判所(TSE)長官は記者会見を開き,結果を辛抱強く待つよう国民に呼びかけた。

(6)18日24時頃Ciesmori社及び19日午前3時頃フビレオ財団が,出口調査の結果を公表した。
ア Ciesmori社出口調査(269の投票所で151,000名を対象実施,誤差0.3~1%)結果概要
(ア)全国レベル
アルセ元経済・財務大臣(MAS党):52.4%
メサ元大統領(政党連合「市民共同体」(CC)):31.5%
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長(政党連合「私たちは信じる」):14.1%
チ候補(FPV党):1.6%
ママニ候補(PAN-BOL党):0.4%
(イ)県毎の投票傾向(上位3政党)
ラパス県 MAS:65.3%,CC:31.7%,FPV:1.7%
コチャバンバ県 MAS:63.1%,CC:34.1%,「私たちは信じる」:1.3%
サンタクルス県 「私たちは信じる」:45.2%,MAS:35.2%,CC:18.2%
チュキサカ県 CC:52.4%,MAS:42.1%,「私たちは信じる」:2.9%
オルロ県 MAS:62.4%,CC:33.9%,FPV:1.8%
タリハ県 CC:51.0%,MAS:40.2%,FPV:5.7%
ポトシ県 MAS:51.5%,CC:41.6%,「私たちは信じる」:3.1%
ベニ県 CC:41.3%,MAS:31.7%,「私たちは信じる」:24.5%
パンド県 MAS:45.8%,CC:27.3%,「私たちは信じる」:24.9%
イ フビレオ財団出口調査(ランダムに選択した1,200の投票所における4,711の投票箱の集計票の結果を基にした投票結果速報(誤差:1.48%(全国レベル),3.16~6.60%(県レベル))結果概要
(ア)全国レベル
アルセ元経済・財務大臣(MAS党):53.0%
メサ元大統領(政党連合「市民共同体」(CC)):30.8%
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長(政党連合「私たちは信じる」):14.1%
チ候補(FPV党):1.6%
ママニ候補(PAN-BOL党):0.5%
(イ)県毎の投票傾向(上位3政党)
ラパス県 MAS:67.0%,CC:29.8%,FPV:1.8%
コチャバンバ県 MAS:60.3%,CC:37.0%,「私たちは信じる」:1.3%
サンタクルス県 「私たちは信じる」:44.3%,MAS:36.9%,CC:17.5%
チュキサカ県 CC:48.3%,MAS:46.6%,「私たちは信じる」:2.6%
オルロ県 MAS:66.0%,CC:30.2%,FPV:2.0%
タリハ県 CC:52.0%,MAS:40.5%,FPV:4.8%
ポトシ県 MAS:56.6%,CC:36.8%,FPV:2.8%
ベニ県 CC:38.6%,MAS:34.7%,「私たちは信じる」:24.3%
パンド県 MAS:45.4%,CC:27.6%,「私たちは信じる」:24.9%

(7)18日米州機構(OAS)及び19日国連ボリビア事務所及びグティエレス国連事務総長がボリビアにおいて総選挙が平和裏に実施されたことを祝福する旨の声明を発出した。

(8)18日19時過ぎ、在ボリビアEU代表部はツイッターにてボリビア総選挙にかかるコミュニケ(駐ボリビア独、スペイン、仏、イタリア、スウェーデン各大使と合意済み)を発表

(9)19日11時過ぎ,メサ候補(政党連合「市民共同体(CC)」,元大統領)は,自身のツイッターを通じて,事実上の敗北宣言とも解されるツイートを発信した。

(10)同日,アルセ大統領候補(MAS党,元経済財務大臣)は,出口調査の結果(大統領当選見込み)を受けて,チョケワンカ副大統領候補同伴の下記者会見を行い,抱負等に関し発言した。

(11)同日,アニェス暫定大統領は,自身のツイッターを通じて,アルセ大統領候補及びチョケワンカ副大統領候補に対して祝意を表明した

(12)19日午前,アルマグロ米州機構(OAS)事務総長は,自身のツイッター(OASがリツイート)を通じて,アルセ大統領候補及びチョケワンカ副大統領候補に対して祝意を表明した。

(13)21日,OASはツイッターを通じて,OASボリビア選挙監視団がボリビア総選挙にかかる仮報告書(http://www.oas.org/documents/spa/press/Informe-preliminar-Bolivia-2020.pdf)を提出した旨公表した。

(14)24日に最高選挙裁判所のHPに公表された公式集計(開票率100%)の開票結果は次のとおり。
(ア)投票内訳
有効票:6,159,122票(94.99%)
白票: 91,419票(1.41%)
無効票:  233,357票(3.6%)
総投票数:6,483,916
有権者数:7,332,926
投票率:88.42%
無効となり再投票が必要と判断された投票箱:なし
(イ)各候補得票率
アルセ元経済・財務大臣(MAS党):55.10%(3,393,978票) 当選
メサ元大統領(政党連合「市民共同体」(CC)):28.83%(1,775,943票)
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長(政党連合「私たちは信じる」):14.00%(862,184票)
チ候補(FPV党):1.55%(95,245票)
ママニ候補(PAN-BOL党):0.52%(31,770票)
(ウ)上院・下院議席配分
・上院(36議席):MAS党:21議席,政党連合「市民共同体」:11議席,政党連合「私たちは信じる」:4議席
・下院(130議席):MAS党:73議席,政党連合「市民共同体」:41議席,政党連合「私たちは信じる」:16議席
(15)23日,コパ上院議長(MAS党)は,最高選挙裁判所(TSE)によるアルセ元経済・財務大臣(MAS党)の大統領選当選の発表を踏まえ,アルセ次期大統領は11月8日に国会において就任の宣誓を行う。式典のプロトコルは自分(コパ上院議長)が担当し,友好国を招待する予定であると発言した。
(16)アルセ政権の発足を踏まえた動き
ア 在ボ墨大に亡命中の前政府関係者関連
(ア)20日,ロンガリク外務大臣は,在ボ墨大に亡命中の前政府関係者に対する通行許可証(salvo conducto)の発行に関し,判断をアルセ次期大統領に一任する旨発表した。
(イ)21日,アルセ次期大統領は,同関係者に対して通行許可証を発行する旨名言する一方で,次期政権で要職に就くことはないと明言した。
(ウ)25日,パコMAS党報道官は,「すべての選挙キャンペーンは(アルセ候補とチョケワンカ候補)の2名のためのものだった。変革のプロセスを破壊し,党の構造を内側から傷つけた悪者たちは,アルセ政権の間戻ってくることはない」と発言した。
(エ)24日,ラパス地方刑事裁判所のカストロ第一判事は,アルセ(Mr. Hector Arce)元法務大臣に対する逮捕状には法的根拠がなく,検察庁は「政治的迫害のため目的なく」発出したとして,右逮捕状を取消した。
イ モラレス大統領関連
(ア)26日,ラパス地方刑事裁判所は,モラレス前大統領に対する逮捕令状の発行手続には不備があったと指摘し,その効力を否定した。
(イ)27日,ロドリゲス・チャパレ地方コカ栽培6団体連盟副議長は,モラレス前大統領は11月9日に帰国し,11日,コチャバンバ県チャパレにおける祝賀会に出席する旨発言した。
ウ 上院・下院法の改正
(ア)27日,上院議会は,上院法第12条,第53条,第81条,第94条,第107条,第109条,第111条,第167条,第169条及び最終条項第2項を改正し,一部の法案(例:国家警察及び国軍幹部の昇進,法案の協議期間の決定,大使及び外交官に対する勲章授与ほか)については可決に必要な票数を3分の2から半数に変更した。(当館注:憲法の該当条項(3分の2以上の票を必要とする法案)には,右法案は列挙されていないため,本改正は憲法には抵触していない。)
(イ)下院は,下院内規則の第19条,第30条,第48条,第91条,第103条,第104条,第134条,第146条,第174条を改正し,一部の法案については可決に必要な票数を3分の2から半数に変更した。
(ウ)30日,ロンガリク外務大臣は,右を批判し,OASからの進言を求めるレターを発出した。
 

4 新型コロナウイルス関連

アニェス政権は,9月29日付け最高政令第4352号(別添)をもって, 10月1日~31日のCOVID-19対策に関し,「封鎖後の共同モニタリング」のフェーズを継続し,外出可能時間を深夜12時まで延長する等の規制の変更を行った。